バイクすり抜け問題:法律から見て:追い抜き

 

追い越しは「追いついて」から「進路を変え」、先行車両の「前方にでる」ことですから、「追いつく前」に「進路変更」しておけば追い越しではなく追い抜きだとされています。これですり抜けは「追い抜き」だから「追い越し」違反ではないという理屈は正しいと言えるのでしょうか?

 

まず「追い抜き」とはっきり言えるのは車両通行帯のある道路で違う車線(車両通行帯)を走行していて他の車線の車の前方に出た場合くらいだと思われます。車線が違えば「追いついた」ことにはならず、追い越しの定義は満たさないからです。

 

では車両通行帯のない道路(例えば片側1車線の道路や中央線のない道路)ではどうでしょう。このような道路を走行する場合はキープレフトが求められていることを思い出してください。先行車両に対して「追いつくといえる車間距離」よりも前で進路変更をするときどうなるか?先行車両が法規通り左によって走行していた場合、後続車両は右に進路変更することになり、キープレフトに違反する状態となってしまいます。ですからこの状態の「追い抜き」は道路交通法上正しく定義するとキープレフト違反を伴った追い越しということになるでしょう。逆にこの状態も「追い越し」と言ってしまえば、一時的ならキープレフトでなくなっても問題ありませんが、すり抜けの際に「追い越しは駄目だけど追い抜きなら大丈夫」という理屈が成り立たなくなるため、これはこれで問題となります。

 

結局どちらに転んでも、「すり抜けは追い抜きなので問題なし」とは言えないことになります。

 

左側から追い抜くという形態ですり抜けたら問題ないのではないかと思うかもしれませんが、よほどのことがない限り、先行車両の左横に空いている空間は安全の確保のために残してあるだけの狭い空間です。ですから「追いついたといえる車間距離」分、離れれた状態では走行位置が少々ずれていてもやはり「追いついた」と見なせる状態となります。このため「追い越し」として扱われ、左側追い越しとして違反となります。またキープレフトも安全性がもとめられるため、極端すぎるとやはり違反の状態でしょう(このあたりは安全運転義務違反と絡んできそうです)。また先行車両が信号などで止まっていたり、スピードが遅くなった場合であれば割り込みとなり、やはり道路交通法違反です。

 

以上のように「同一車線内追い抜きというのはキープレフト違反など不適切な状態から始まるため、たまたま進路変更をしなくて良くなった追い越しである」と定義できます。ですから「追い越しは駄目だけど追い抜きはOK」というのは屁理屈ということになります。 

 

安全面からも見てみましょう。

自転車が左端にできるだけよって、かつ自動車が中央にぎりぎりよって追い越すことが可能な道路が一部ありますが、車が普通に走っているときに普通に走っている車との間に安全な側方間隔を取った状態で同一車線内の追い抜き・追い越しができるほど車線幅が広い道路は日本には存在しないと思われます。無理やり同一車線内追い抜き・追い越ししようというのは危険運転と言えるでしょう。道路を作る際の法律である道路構造令においてその第2条4で「車線」を「一縦列の自動車を安全かつ円滑に通行させるために設けられる帯状の車道の部分をいう。」と定義されていることからも、同一車線で安全に並走できるように作られていないことも明らかです。イエローカットしなければ追い抜きだから大丈夫と言って、側方間隔もほとんどない状態で走ることは危険性の上ではどっちもどっちです。むしろ十分な安全確認をするなどしていればイエローカットしているほうが安全性が高い場合もあるでしょう(注:比較であって推奨はしていません)。

 

 

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