バイクすり抜け問題:法律から見て:交差点付近追い抜き禁止

 

「道路交通法の解説(第11訂版)」(一橋出版)によると道交法第30条ではここで規定された場所(交差点や横断歩道などの手前30mなど)では追い越しのため、(1)進路を変更すること、(2)前車の側方を通過することの二つが禁止されていると解説されています。また先行車両が自動二輪車であり、道路の幅員が広いため進路変更をしないで追い越しできる場合(すり抜け容認の方のいう同一車線内追い抜きにあたります)でも、追い越しをすれば「前車の側方を通過してはならない」という部分に違反すると説明されています。交差点付近は追い越し追い抜きともに禁止されているのです(同一車線内追い抜きは追い越しの一形態:亜型です。これについてはこちらを参照してください)。
 また「交差点は車両の進行形態が一様ではないので追い越しには危険が伴います」とその理由が述べられています。

 

 このことからいわゆる「左折巻き込み事故」はすり抜け二輪車がこの条項を意図的に犯したことが一因と言えます。もしくは車間距離を十分にとっていなかったとも言えます(道交法25条違反)。これらは意図的に防げるものです。左折時の安全確認が必要ないとは言いません。大事なことなのでしっかりやる必要がありますが、これは十分注意していても状況によっては結果不十分ということが起こりえます(完全になくすことのできないヒューマンエラー)。

 安全を考えた場合、ヒューマンエラーを0にすることは不可能ですが(どれだけ頑張っても人間が存在する限り可能性は低くなったとしても残ります)、意図的な違反をやめることは可能です。すり抜けせずに車間距離をしっかり取っていれば車が不完全な左折をたまたましてしまった場合でも、バイクが車の合図をたまたま見逃してしまった場合であっても事故は起こりません。

 

 わたしは以上のような理由で「巻き込み事故」よりも「巻き込まれにいった事故」の方が多いだろうと思っています。そしてこれがすり抜けをすべきでないという一番の理由です。 

 また、直進車優先と言っても違法な直進は優先されません(例えば信号無視の直進車には全過失があります)。当り前のことですが、巻き込み事故やサンキュー事故ではこのあたりに大きな誤解も存在しています。

 

 

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道路交通法
(追越しを禁止する場所)
第三十条  車両は、道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、他の車両(軽車両を除く。)を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない。
 道路のまがりかど附近、上り坂の頂上附近又は勾配の急な下り坂
 トンネル(車両通行帯の設けられた道路以外の道路の部分に限る。)
 交差点(当該車両が第三十六条第二項に規定する優先道路を通行している場合における当該優先道路にある交差点を除く。)、踏切、横断歩道又は自転車横断帯及びこれらの手前の側端から前に三十メートル以内の部分

(車間距離の保持)
第二十六条  車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

 

 

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