路肩と車道外側線:車道外側線外側の走行の矛盾
「車道外側線の外側を車道と見なせばすり抜けは違反ではないのではないか?」について別の観点から考えてみます。
車道と考えた場合、それは新たな車線なのか、または車が通常走っている車線の一部と考えるのかどちらになるのでしょうか? 結論を先に言うとこの考えには矛盾か違反かどちらかがあり、どのように考えても違反であると言わざるをえません。
新たな車線と考えた場合、車線が複数存在することになります。このことが複数の矛盾を生みます。道路交通法に従うと車両通行帯が存在する場所では車両は左端の車線を通行しなければならないことになるため、多くの車がこれに違反して走っていることになってしまいます。また原付自転車は右折レーンなども含み片側3車線以上の交差点では原則として二段階右折をしなければならないことになってしまいますから、右折レーンのある交差点では必ず原付自転車は二段階右折をしなければいけないことになります。実際はそうなっていませんし、二段階右折違反として取り締まられることもありませんのでこの車道外側線外側は新たな車線とは見なされていないことになります。もしこのようにお考えのすり抜けを肯定する原付運転手は右折レーンのある交差点(普通の人間は片側1車線道路+右折レーンで計2車線ととらえる交差点)でも二段階右折をして初めて、ご自身のポリシーを貫くことになります(逆に取り締まられる可能性がありますのでおやめください)。
また、車両通行帯のある道路では道路交通法第二十条3によって「追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない。」とされていますから、左側の車線(車道外側線外側)を使って追い越しをかけることは違反となってしまいます。車道外側線外側を新たな車線と考えた場合はこのように矛盾や違反が満載ですから、この考え自体が否定されます。
次に車が通常走っている車線の一部と考えた場合はどうでしょう。先に述べたような矛盾点は存在しませんが、次のような違反となります。
道路構造令の第2条5において「車線」を「一縦列の自動車を安全かつ円滑に通行させるために設けられる帯状の車道の部分をいう。」と定義しています。このため先行する車両の先に出ようとすると「追い越し」をかけるという形になりますが、追い越しは道路交通法第二十八条において原則として右側から行うことが決められています(例外は前車が右折しようとしている車のときです)。このため車道外側線外側を使ったすり抜け行為は左側追い越しという違反に該当してきます。この場合にハンドルを切らずに追い越せたとしても追い抜きとは言えません。追い越し前の状態に問題のある追い越しと見なせるからです(詳しくは追い抜きの項で)。また同一車線を走っていて追いつくということで、ある段階で車間距離不保持となってしまい、道路交通法第二十六条違反となります。
路面の状態からも車両が通行すべきでないことは一目瞭然です。一時停止などの道路標示は車道外側線外側の領域には存在しません。横断歩道を示すペイントもほとんどは車道外側線外側には存在しません。設計段階から車線として認識されていない場所であるため、この部分にペイントする必要がないのでしょう。溝やマンホールなどが設置されていることもあり、車両が通行するには危険性が高いのですが、車両が通行して良い場所とは認識されていないためにそのような危険性があったとしても問題にならないのでしょう。車両が通行して良い場所という認識であればもし事故が起こった時の責任を考えると通常の車線と同じように安全性に配慮されているはずです。
資料:
道路構造令
第2条 この政令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
4.車道
専ら車両の通行の用に供することを目的とする道路の部分(自転車道を除く。)をいう。
5.車線
一縦列の自動車を安全かつ円滑に通行させるために設けられる帯状の車道の部分(副道を除く。)をいう。
6.付加追越車線
専ら自動車の追越しの用に供するために、車線(登坂車線、屈折車線及び変速車線を除く。)に付加して設けられる車線をいう。
7.登坂車線
上り勾配の道路において速度の著しく低下する車両を他の車両から分離して通行させることを目的とする車線をいう。
8.屈折車線
自動車を右折させ、又は左折させることを目的とする車線をいう。
9.変速車線
自動車を加速させ、又は減速させることを目的とする車線をいう。
道路交通法
第二十条 車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によつて指定された自動車を除く。)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。
2 車両は、車両通行帯の設けられた道路において、道路標識等により前項に規定する通行の区分と異なる通行の区分が指定されているときは、当該通行の区分に従い、当該車両通行帯を通行しなければならない。
3 車両は、追越しをするとき、第二十五条第一項若しくは第二項若しくは第三十四条第一項から第五項までの規定により道路の左側端、中央若しくは右側端に寄るとき、第三十五条第一項の規定に従い通行するとき、第二十六条の二第三項の規定によりその通行している車両通行帯をそのまま通行するとき、第四十条第二項の規定により一時進路を譲るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、前二項の規定によらないことができる。この場合において、追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない。
第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
第二十八条 車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その追い越されようとする車両(以下この節において「前車」という。)の右側を通行しなければならない。
2 車両は、他の車両を追い越そうとする場合において、前車が第二十五条第二項(前車が右折車両であるとき)又は第三十四条第二項(前車が右折しようと右側によっているとき)若しくは第四項(前車が一方通行の道路で右折しようと右側によっているとき)の規定により道路の中央又は右側端に寄つて通行しているときは、前項の規定にかかわらず、その左側を通行しなければならない。
3 車両は、路面電車を追い越そうとするときは、当該車両が追いついた路面電車の左側を通行しなければならない。ただし、軌道が道路の左側端に寄つて設けられているときは、この限りでない。
4 前三項の場合においては、追越しをしようとする車両(次条において「後車」という。)は、反対の方向又は後方からの交通及び前車又は路面電車の前方の交通にも十分に注意し、かつ、前車又は路面電車の速度及び進路並びに道路の状況に応じて、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。