バイクすり抜け問題:考えてみる:はみ禁を考える
オレンジ色のセンターライン、正式には「追い越しのための右側部分はみ出し通行禁止」の中央線、俗称「はみ禁」について考えてみます。
これははみ出さなかったら追い越しても良いとも受け取れます。確かにその通りですが、こちらを優先しすぎて、自転車や原付などの脇ぎりぎりを追い越す車や渋滞中の車の右側ぎりぎりを追い越していくすり抜けバイクをよく目にします。はみ出さなければどんな追い越しでも良いわけではありません。追い越しには「安全な方法」が求められています。ぎりぎりを追い越すのは安全な方法とは言えず、何か事故があれば十分違反として扱われるべき運転です。
一方、白い実線の中央線も存在します。この白色実線中央線の意味は「道路の右側にはみ出して通行してはならない」ということです。この線が引かれている道路は通常は追い越し時にも中央線をはみ出さずに走行可能なだけ十分な幅員(6m以上)がある道路です。
これらは法律ではどうなっているのでしょうか。
道路交通法第17条5
車両は、次の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、道路の中央から右の部分(以下「右側部分」という。)にその全部又は一部をはみ出して通行することができる。(略)
一から三 略
四 当該道路の左側部分の幅員が六メートルに満たない道路において、他の車両を追い越そうとするとき((略)、道路標識等により追越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されている場合を除く。)。
とあります。白色実線の中央線は6m以上の左側幅員のある道路にひかれ、道交法第17条5四は適応外となるため、右側にはみでて追い越してはいけないことがわかります。一方、幅員が6mに満たない道路では中央線ははみ出し追い越し可能な破線の中央線では安全確認の上、はみ出し追い越しが可能ですが、オレンジ実線の中央線の場合にははみ出し追い越しは禁止であることがわかります。
さらに道交法第17条の他の条項(下記に記載)から白色実線の場合もオレンジ実線の場合もどちらの場合であっても、工事や道路の損壊などで十分な通行スペースがない場合は十分な安全確認の上であれば中央線をはみ出して走行することは可能です。
はみ禁の道路で自転車や原付を追い越す場合を考えましょう。
追い越す側の車両には先にも述べましたが、中央線をはみ出さないことと安全な方法での追い越し方が求められています。高速でぎりぎりを追い越すということは違反行為です。
一方、自転車や原付には後続の自分よりも高速の車両に進路を譲る義務があるため、できるだけ左端により、後続車両が安全に追い越せるように努めなければなりません(道路交通法第27条)。道路の制限速度が30kmであれば原付であっても車に進路を譲る義務はありませんが。
このように追い越す方も追い越される方も双方とも安全な追い越しとなるような運転を求められており、双方がこれらに努めなければ合法的な追い越しは不可能でしょう。
逆にはみ禁道路で自転車や原付が車を追い越す場合を考えましょう。
この場合、追い越しされる側には制限速度による縛りが働かないため、進路を譲る義務はありません。このため車のどちらかのサイドから追い越そうと思っても安全な側方間隔をとって追い越すことは不可能でしょう。ちなみに、渋滞や信号待ちの車列の前に出ようとする場合は割り込みという違反になります。
自転車や原付からすると自分たちは譲らなければいけないのに逆はあり得ないというのは理不尽かもしれませんが、法律上はこのようになっているのです。道路交通法は安全のために作られており、それぞれの条項にはそれなりの意味があることを理解しましょう。