バイクすり抜け問題:安全面から見て
すり抜けは左右どちらからであっても法律的にはできないことは法律面から見てで説明しましたが、すり抜けをする人、特にすり抜けをバイクの特権だと思っている人やすり抜けができるからとバイクを乗っている人には法律面からだけではなかなか理解していただけません。そこで安全面からもすり抜けを考えたいと思います。
結論を先に言うと安全運転を考えるだけですり抜けはできないということです。「だろう」運転ではなく「かもしれない」運転をする限りはすり抜けはできないのです。同一車線で十分な側方間隔をとり追い抜くこと、追い越すことは日本の道路ではまず無理です。駐車車両の側方を通過するときに十分な間隔が取れないことがあります。バイクのすり抜けと違ってこれは合法的な側方通過ですが、この場合、多くの車(常識的な運転をする車)はその駐車車両の動向に十分注意し、不十分であってもあけれるだけの側方間隔をあけ、注意し追い越します。車両の影から人や自転車、他の車両が飛び出してこないか、車の扉が急に開かないかなどに注意しながら進むのです。注意不足で事故を起こした場合はケースにもより大小はありますが、追い越し車両の運転手の過失となってきます。これは社会全体としても当然のことと認識されています。しかし、バイクの「すり抜け」でここまで注意しながら運転しているすり抜け車両はまず見かけません。安全意識の欠如と言われても仕方のない状態です。
扉が急に開いても大丈夫な側方間隔をとることやそれが無理な場合は1台1台の扉を十分に確認しながら、かつ車両間からの人や他の車両の飛び出しに目を光らせながらすり抜けていくということは恐ろしく神経を消耗するはずです。さらに言えば、バイクは速度が遅いほど不安定な乗り物ですから、安全を十分に確認できる速度では不安定となり、かえって転倒や接触などの危険がでてくるでしょう。この場合はすり抜けずに停車するという選択が必要になります。このように「かもしれない」運転を行う限り、すり抜けができるような状況にはならないはずです。
またすり抜けする人の言い訳として車列の後ろに並ぶと追突される危険があり、実際に亡くなっている人がいるというものがあります。これはこれで事実なのですが、すり抜けすることの理由になるのでしょうか?車の運転でも同じことが言えますが、ミラーで後続車両が減速しようとしているか、ちゃんと止ろうとしているかを確認すれば良いのです。それが確認できるまでは前の車とはある程度の車間距離を開け安全空間を作っておきます。後続車両が止まらない場合は安全空間を利用し、危険の回避や軽減に努めます。バイクの場合は先行車両の車両間もしくは車両側方のいわゆる「すり抜け空間」を危険回避に使えば良いのです。このような正真正銘の危険回避のためであれば私を含め誰も文句は言わないでしょう。一方、後続車両がちゃんと止まることが確認できれば余裕を持って開けていた車間距離を詰めれば無駄に長い車列になることも防ぎます。
このように言ってもなお、バイクを急に発進させられないとか、バイクのことが分かっていないと言われたこともありますが、信号が変わるとすぐに飛び出していくバイクを見ていると詭弁にしか思えません。すり抜けを正当化する理由にはならないと思います。
さらに安全のために何が必要かを考えてみたいと思います。車では「車両自体の安全性能が高いこと」、「他の車両とどれだけ離れて走っていたか」、「自分および相手の車両の速度がどれだけ遅いか」ということが重要となります。一方、バイクの場合は車両自体の安全性能はほとんど意味を持ちません。車と違って自分の身を守ってくれる入れ物ではないからです。自分および相手の車両の速度がどれだけ遅いかということはそれなりに意味を持ちますが、相手の車両の速度や動きまでを自分でコントロールできるわけではありませんから、バイクの場合、安全性を高めるために一番重要なのは「他の車両とどれだけ離れて走るか」ということになります。
バイクは車と違いどれだけの車間が空いているかを直接確認できるためか、車間距離が近い傾向があるようです。しかし、バイクは安全上、車以上に車間距離を(可能な限り)とって走るべき乗り物なのです。バイクをバイク自体の大きさで見るのではなく、車1台分位の大きさの空間を占拠している乗り物と見て走ることがバイクの側も車の側も必要だと個人的に思っています。バイクの周りの前後左右約1mは他の車両が絶対に侵してはならない絶対安全空間と考えるのです。見えない車のボディがあるかのように運転すべきなのです。この絶対安全空間に他の車両を入れないために他の車両との間に十分な間隔をとるべきです。このため車がバイクを追い越すとき、車を追い越すときよりも余分に側方間隔を取るべきでしょう。これはそのままバイクが他の車両を追い越すときにも言えます。もちろんすり抜けのときにも。
これらの考えは防衛運転の考え方です。